「〜此処から〜」の個人的な感想

先日、投票結果発表が行われた「ジャニーズ楽曲大賞」で第9位にランクインした「〜此処から〜」。
遅ればせながら、改めて「〜此処から〜」について考えた。

「〜此処から〜」は20周年の記念にV6が作詞をし、井ノ原さんが各々の詞を1つにまとめ作曲を手掛けた楽曲。
最初はファンに向けての詞を考えていたが、途中からメンバーに向けての詞に変更になった。

全員の詞を見たのはまとめ役を務めた井ノ原さんだけで、こんな風に思っていたんだとか、これはあの時のことだなとか、とても感慨深かったそうだ。
メンバーは井ノ原さんに提出するのが相当恥ずかしかったようで、渡した紙を「早く捨ててくれ(笑)」と、歌う時も「赤裸々過ぎて恥ずかしい」と言っていた。

坂本さんと剛くんの詞はなぐり書き、長野さと岡田さんの詞は丸々1曲作れそうなくらい完成度が高く、健くんは1番量を多く書いていたらしい。
井ノ原さんは詞をまとめるのは大変だったけど、20年共に同じ道を歩んできた者同士、6人の考え方は同じだったと言っていた。

歌割は出来るだけそれぞれが書いた部分を歌うように割り振られた。

剛くんの「丁度いい距離保ちながら ユラユラと流れてきた」から始まるAメロ。
メンバーの近況やマイブームなどを雑誌の対談で知ることもしばしば。
仕事以外ではほとんど会うこともないし、全員の電話番号も知らないと言うV6。
V6・・・と言うか、剛くん以外は多分お互いみんな知ってる(笑)。
剛くんは全員の電話番号を知らないし、メンバーも剛くんのを知らなくて、「死ぬ間際になったら教える」って最近雑誌で言ってた(笑)。

 V6はどちらかと言えば、前へ前へと積極的に進んで行くようなグループではない。
自分たちよりも後輩や周りの人を前へ前へと出してあげるそんなグループだ。
「今年の目標は何ですか?」と聞かれると、みんなが考え込み「特にないですかね・・・流されるままに」と答えるV6。
正に「ユラユラと流れてきた」V6。

元々「ユラユラ」と言う言葉は、風でなびく木の葉っぱを見た時に浮かんだ言葉だと健くんが言っていたけど、隣にいた剛くんをチラッと見ると剛くんも「ユラユラ」と書いていたらしく、「何でこいつも同じこと書いてんだよ!?かぶるかぶる」と思って健くんは書くのを止めたと言っていた。*1
この偶然とは思えない出来事、さすが剛健・・・恐るべし。

「ビールの泡みたいに 僕等消えてしまうことだって出来たのに」と歌っているのは健くんだけど、書いたのは井ノ原さんだと言っていた。
ここで私が注目したのは「消えてしまうことだって出来たのに」ではなく「ビールの泡」と言う部分で、V6の中ではお酒、ビールと言えば誰もが結びつく坂本さん。
世の中には色んな消えてしまうものがある中で、あえて「ビールの泡」を選んだと言うことに、坂本さんのことをジュニア時代から尊敬していた井ノ原さんなりの深い意味があるのではないかと感じた詞だった。
 
10周年の時に反抗期に突入し、2015年に入るくらいまでズルズルと引きずってきたと言う岡田さんの「気付けなかったんだ 若さのせいかな 目の前の情熱で 互いの優しさが見えなくて」は本当に感慨深い。
V6よりも俳優の道へと進んで行った岡田さんに、何を言うこともなくずっと温かく見守り続けたメンバー。
当時は目の前のことに精一杯で周りを見る余裕がなく、メンバーの優しさに気付くことができなかったんだろうなと、今のはじけた岡田さんと重ねると泣きそうになる。

「いつもの調子で行こうぜ」から始まるサビ。
彼らが歩んで来た20年を考えると本当に色んなことを考えしまってグッときてしまう詞が多いけど、私はここの詞が1番好きかもしれない。
別に泣ける言葉でも何でもないかもしれないけど、今までV6が当たり前にやってきた日常を、当たり前にこれからもやって行こうと、こうやって改めて字面にされるとグッとくるものがある。

過去の過ちをなかったことにして忘れるのではなく「いとしい後悔背負って」と「いとしい」と思って背負い続けるV6が私はいとしい。
ここの詞は誰が書いたのか公にされてないので分からないけど、岡田さんが書いた詞なのかなと勝手ながら思ってる。
それこそ、反抗期でメンバーに冷たく接してしまったこととか、健くんに「アイドルとして誇りを持ってくれ」と言わせてしまったことを、インタビュー等で「本当に後悔してるし、本当に申し訳なかったと思ってる。でも、あの時の自分がいなかったらメンバーの愛情に溺れて、今ダメ人間になっていたのかもしれない」と言っていたことがとても印象深く残っているから。

今から17年くらい前に、剛くんが坂本さんに「ありがとうなんて言いたくない。俺たちにはまだまだやらなきゃいけないことがたくさんあるから、これからもよろしく頼むよ」と言う手紙を読んだことがある。
約17年の時を経て「感謝なんてしたくない サヨナラはまだ早いから」と歌う健くん。
ここでも剛健は繋がっていた・・・。

そして2番へと移り、前回の記事でも少し触れたけど「多分このまま続くんだろう 言葉にできない関係で」と言う坂本さんの詞。
「きっと」ではなくて「多分」を使った理由。
多分は「恐らく」「大抵」を意味するけど、「きっと」は話し手の決意や確信、強い要望などを表す言葉で、「確かに」「必ず」を意味する。
人生何があるか分からない。
この関係性が、V6が明日も続くとは限らない。
だから、「きっと」ではなく「多分」を選んだのだと思う。
だけど、それなのに、2番のサビでは「必ず訪れる明日を共に描こう」と力強く綴っている。
「明日は必ず訪れる」と不透明な未来を、何の根拠もないのに「必ず」と自信を持って決め付け、メンバーに「共に描こう」と強引に言い切る。
この詞を書けるのも、歌えるのも、リーダーの坂本さんしかありえないと思うから。
本当は弱気だし優柔不断なところもあるけど、無謀なことを押し通そうと強気ないつもの姿が、ちょっとした言葉の中に垣間見えて心に染み入った。

「感じた 温もりの分だけ 伝えたいけど 照れ臭いから 心に思うよ」と歌う長野さんが本当にそのまま長野さんだった。
斜め上でもなければ想像外の言葉でもないし、その言葉の意味を考えるような言葉でもない。
どこの言葉を取っても長野さんをストレートに表している。
剛くんの影に隠れてるけど、実はメンバーの中で1番自分の気持ちを素直に伝えることが苦手なタイプなんじゃないかと思う。
そんな長野さんが「照れ臭いから心に思うよ」と本心を歌ってると言う事実が熱い。

岡田さんが「『おはよう!』って言うと剛くんが1番元気に挨拶してくれる」って言っていたことを思い出す「けだるく挨拶しようぜ 軽く手なんかあげちゃって」と言う剛くんの詞。
井ノ原さん曰く「剛だけじゃなくて割とみんなそんな感じだよ」と言っていた。
「いつもの調子で行こうぜ」と同じように、当たり前の日常を当たり前に出来る尊さ。
落ちサビで響き渡る剛くんの甘く切ない歌声がその尊さを更に際立たせる。

「〜此処から〜」の詞を見て気付いたことは、詞の中にありきたりな「ありがとう」と言う言葉が1つも入っていないと言うこと。
彼らは「ありがとう」ではなくて「サヨナラはまだ早いから『感謝なんてしたくない』と書いている。

「感謝なんてしたくない」「多分このまま続くんだろう」「照れくさいから心に思うよ」「けだるく挨拶しようぜ」など、不器用な人が多いV6らしい表現だと思った1番と2番。
だけど、最後のサビでは感謝なんてしないけど・・・


「此処からいなくならないで」


と、突然出てくる直球どストレートど真中な言葉。

お、重い・・・。

激重じゃん・・・。

V6重い・・・。

健くんと井ノ原さん(ハモリ)が歌っていて1番盛り上がる箇所だけど、詞を書いたのは剛くんだと思われる。*2

剛健・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


昨日の楽曲大賞のコメントの通り、「20年経ったけど『此処から』また歩き出そう」って言う前向きな楽曲だと思っていたのに、いざ聴いてみると『此処から』いなくならないで」の「此処から」だと言う意味を知った時の衝撃は今でも忘れない。
「『此処から』いなくならないで」の「此処から」だなんて1%も思ってもいなかった。

14歳で大阪から単身で上京して来て、何も分からないままデビュー直前のV6に放り込まれた岡田さん。
毎日怒られて悔しい思いをし、何度も辞めようと思っていた。
20歳の時に辞めると意思を固め、事務所に言いに行く直前に話をもらった「木更津キャッツアイ」。
岡田さんを引き止めたのはメンバーではなく芝居だった。
それから芝居にのめり込んでいくようになり、V6がデビュー10周年を迎えた2005年からV6に対して反抗期が始まった。
V6に心がない岡田さんにメンバーは気付いていたけど、誰が何を言うこともなかった。
「優しく見守ってくれた」と岡田さんは言っていた。

「岡田が1番大変だったんじゃないかな?」とメンバーは口を揃える。
そんな最年少の岡田さんの目から見たV6はどう映っているのか、どうしても岡田さんの言葉で終わらせることにこだわった井ノ原さん。

若さのせいで、目の前の情熱で、メンバーの優しさに気付くことが出来なかった岡田さんが、


「僕を変えてくれた人  優しさを教えてくれた人」


と歌う今。

6人が6人のまま変わることなく過ごしてきた時の流れを感じただただ泣く。

温かく優しいメロディーラインが井ノ原さんの人柄を、V6の雰囲気を表していて本当に大好き。

「〜此処から〜」は初回限定盤のアルバム収録曲で、「Wait for You」みたいにテレビで披露したことも全くなかったのに、楽曲大賞の他担の投票率を見ると5113票に対し804票も入っていたことにビックリした。
シングルとして発売してそこそこテレビで披露した「Timeless」よりも他担の投票率が高かったと言うのも感慨深い。

21年目に突入したV6。
これからも、いつもの調子でユラユラと流れて行く6人に着いて行きたい。

*1:「SUPER Very best」の初回限定盤Aの特典映像にV6の合宿が収録されていて、その合宿で制作が始まった楽曲。

*2:PVで剛くんが書いていたノートに「いなくならないでね」と書かれていた。